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登山を始めて早15年。
マムートから始まり、オスプレー、ミレー、ドイター、グレゴリー、カリマーと主要なメーカーのザックはほとんど使い倒し、10リットルから80リットルまで様々な容量のザックを背負ってきました。
そんなザック使い倒しの私は、ある時ふとこう思いました。

今回は、私がこの結論に至った理由と、なぜ夏山登山は40リットル台だけで良いと思うのかを紐解き、その上でみなさまに本当にオススメしたい40リットル台のザックを3つ紹介していきます。
こんな方におすすめ
- 初めて登山用ザックを購入しようと思っている人
- 40リットル台の登山用ザックを検討している人
- テント泊用の登山ザックを検討している人
目次
そもそも、なぜ40リットル台のザック一つだけで良いと思うのか?
結論は2つ。
① 40リットルはザックの中間値であり「汎用性が高い」から。
② ザックを一つだけで済ませることができれば「コストを抑えることができる」から。
① 汎用性が高い
40リットルは、夏山登山におけるザックの容量の中でちょうど中間に位置しており、どのような山行においても広く使える特性があります。
以下は、夏山登山を山行ごとに3つに分類し、必要とされるザックの容量を表したものです。
ポイント
・日帰り登山(夏山の場合):20リットル〜
・小屋泊登山(夏山の場合):30リットル〜
・テント泊登山(夏山の場合):60リットル以上
このように、夏山登山において使用されるザックの容量は20リットル〜60リットルの間であり、40リットルは概ね中間値であることが分かります。
ではもう少し分かりやすく、3つの山行内容と40リットル台のザックがどの様に使用されるのかを容量と体積ベースでみてみましょう。
【CASE1:日帰り登山の場合】
容量に関しては勿論十分です。
しかし、40リットルは”容量が余ってしまい荷物が偏る”という懸念があります。
そのようなときは、”絞り”を活用することで問題を解決しましょう。
”絞り”とは、大抵のザックに搭載されている機能で、ザックの上部から下部に張り巡らされたナイロン製のベルトのことです。
容量が余ってしまい荷室内で荷物が偏る際は、この”絞り”を適度に縮めることで、ザック全体が縮まり、荷物の偏りを軽減することが可能です。
【CASE2:小屋泊登山の場合】
こちらも容量に関しては十分です。
地図、コンパス、ウェア、水、携行食、着替え、バーナー、ファーストエイドキット等々、必要なものを全て入れても10〜20リットルほどで、ザックの半分程は余裕ができます。
容量に余りが出てしまい、荷物が偏るようであれば、前述の“絞り”を活用して荷物の偏りを少なくすると良いです。
【CASE3:テント泊登山の場合】
結論、1泊2日のテント泊装備であれば十分に収納が可能です。
なぜなら、昨今のテント泊装備の軽量化と小型化を考えると、夏山であれば40リットルのザックで十分にテント泊装備が収納可能であり、重量面でも問題なく使用する事ができるからです。
テント泊装備については、容量について不安な方もいると思うので、もう少し詳しく説明をします。
まずは、みなさんご存知である登山用品メーカー「モンベル」から販売されている商品で説明をします。
今回は、「テント、シュラフ、マット」を収納することを前提に、体積ベース(リットル)で40リットルのザックにそれらが収納可能であるかを考えてみましょう。
前提条件:平均的な体型(身長175cm、体重65kg)の男性一人が、一人用山岳テントで夏山シーズンの八ヶ岳(赤岳)に1泊2日のテント泊を行った場合
まずはじめに、 「1、使用するテント泊装備と想定される使用容量」 を確認します。
テント:ステラリッジテント1(フライシート・ペグを含む)
(総重量:1.34kg、収納寸法:∅13.5×49cm)
=想定される使用容量:約6リットル〜約8リットル
シュラフ:シームレスダウンハガー#3
(総重量:555g、収納寸法:∅13×26cm)
=想定される使用容量:約3リットル〜約5リットル
マット:U.L. コンフォートシステム アルパインパッド25 180
(総重量:681g、収納寸法:∅16×25cm)
=想定される使用容量:約5リットル〜約7リットル
この3つの合計で
「(想定される使用容量):約14リットル〜約20リットル」
であることが分かりました。
次に「2.収納するザックの容量」について考えてみましょう。
40リットル台のザックは、メーカーにもよりますが、おおよそ高さ50〜60cm、幅30cm〜40cm、奥行25cm〜30cmものが一般的であるため、寸法から考えると、
合計:約37500㎤(37.5リットル)〜72000㎤(72リットル)
となります。
「2.ザックの容量(37.5〜72リットル)」
から
「1.使用するテント泊装備と想定される使用容量(14〜20リットル)」
を引くことで、おおよそ余りが20リットル以上は出る計算になります。
残りの容量には、地図、コンパス、水分、携行食、食事、バーナー、コッフェル、着替え、ヘッドライト、エイドキット等々、日帰り登山や、小屋泊登山でも使用する物を収納するスペースに充てれば、十分にテント泊装備が収納が可能であることが分かります。
② コストを抑えることができる
40リットル台のザック一つだけで全ての山行が可能になるため、ザックにかかる費用が少なく済みます。
たとえば現行で販売されている男性向け40リットル台のザックですと、約¥30,000〜が相場です。
(今回は市場で人気のグレゴリー、オスプレ、ドイターを例に出しています。)
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メーカ | グレゴリー | オスプレー | ドイター |
モデル名 | ズールー48 | ケストレル48 | フューチュラプロ40 |
価格 | ¥33,000(税込) | ¥31,900(税込) | ¥31900(税込) |
対して、山行に合わせてそれぞれの容量のザックを揃えようと思うと、最低でも以下3つのザックを揃えなければなりません。
- 10〜20リットル台の日帰り用ザック
- 30〜40リットルの小屋泊用ザック
- 60リットル以上のテント泊用ザック
上記の相場を人気のブランド「グレゴリー」のザックで確認してみましょう。
容量 | 10〜20リットル台 | 30〜40リットル台 | 60リットル以上 |
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モデル名 | ナノ24 | ズールー48 | バルトロ65 |
価格 | ¥15,400(税込) | ¥33,000(税込) | ¥52,800(税込) |
容量やモデルにもよりますが、概ね以下のような相場です。
- 10〜20リットル台:¥15,000〜
- 30〜40リットル台:¥30,000〜
- 60リットル以上:¥40,000〜
合計すると3点揃えて、約¥80,000以上は費用がかかる計算となります。
40リットル台のザックを一点揃えるのと、それぞれの山行に合わせて、各容量のザックを揃えるのとでは、約¥40,000〜¥50,000ほど差が出ることがわかります。
全ての山行に合わせてザックを用意しようとすると、どうしても金額として高くついてしまいます。
その点、40リットルのザックひとつだけに留めておけば、費用は確実に安く済みます。
浮いたお金を別の登山ギアへ充てるのも良いでしょう。
理屈を抜きにしても、40リットル台のザックは最強でした!
以上、多少理屈的な部分で利用可能であるのか、またそれぞれの金額を比較し検証および解説致しました。
ただ理屈を抜きにしても結局のところ、私自身の経験ベースの話で言えば、40リットル台のザックはどの様な山行であっても使用することのできる汎用性を持っている”最強のザック”と言い切ることができます。
実際、これまで様々な山行を経験してきた私ですが、40リットル台のザックを使用する頻度が最も高かったです。
ちなみに、私が愛用していた40リットル台のザックは既に手放し、廃盤ともなってしまっている「マムート:リチクムクレスト40+」というザックです。
マムート:リチウムクレスト40+
私は、このザックで標高1000mにも満たない低山ハイクや、小屋泊で1泊2日の八ヶ岳縦走、また北アルプスの岩稜帯をテントを担いで3日間縦走するなど、様々な場面で使用をしてきました。
その他にも、このザックでロープやクライミングギアを担ぎながらアルパインクライミングを行ったり、沢登りで滝に打たれながら使用をしたり、厳冬期の雪山登山で使用をしたりと、本当に様々な場面で活躍をしてくれたザックでした。
ザックを背負って2泊3日の登山の私
最後に、オススメしたい40リットル台のザックを3つご紹介!
結論に行く前に、元登山用品専門店販売員として、ザックを選ぶ際に必ず行って欲しい事が一つあります。
それは、「背面長」を意識した上で「3つ以上のメーカーのザック」を試しに背負ってみることです。
メモ
背面長とは:「背骨の長さの事を指し、同時にザックのショルダーストラップの付け根から腰ベルトまでの長さの事を表します。
ザックを選ぶ上でまずやってはいけない事は、好きなメーカーや好きなデザイン(形や色)だけで選んでしまうことです。
これは、ザックに限った話ではないですが、メーカーやデザインだけで登山用品を選んでしまい、結果山行中にトラブルに見舞われた方を私は何百人も見てきました。
特にザックに関して言うと、登山靴やウェアとは異なり「サイズ」という概念が乏しい現状があります。
ですので、まずは自分の背面長がどのくらいの長さであるのかを知り、(登山用品店に行けば背面長を計測できます)最低でも3つの異なるメーカーのザックを試しに背負ってみることで、自分の背中に合っているか否かの判断をしましょう。
では、自分の背中に合っているかどうかはどのように判断するのでしょうか?
判断するポイントは大きく分けて3つです。
- ウェストベルトを締めた状態で腰骨(腸骨稜)にウエストパッドの中心が乗っているかどうか
- ショルダーハーネスを締めた状態で、ザックと密着する背中周りに大きな浮きがないかどうか
- すべてのベルト・ストラップを締めた状態で腕や足が動かし辛くないかどうか
ここにまとめた3つの内容は大まかな判断ポイントです。
実際には、ザックによって背面長のサイズ調整をしたり、チェストハーネスの形状が体つきに合っているか確認をしたり、もっとより詳細に確認をする項目がいくつかあります。
ここでは、あくまで大まかな判断基準として、上記を参考にしていただきたいと思います。
もし、実際にザックを購入される際は、一度最寄りの登山用品店へ来店していただき、現物のザックを確認した上で、販売員の方と話合いながら自分の背面長や体つきに合ったザックを選ぶのがベストです。
元登山用品店販売員が本当にオススメしたい40リットル台のザックを3つ紹介!
- グレゴリー:ズールー45(男性向け)・ジェイド43(女性向け)
- オスプレー:ケストレル48(男性向け)・カイト48(女性向け)
- ドイター:フューチュラプロ40(男性向け)・フューチュラプロ38SL(女性向け))
1.グレゴリー : ズールー45(男性向け)・ジェイド43(女性向け)
メーカー:グレゴリー
モデル名:左、ズールー45(男性向け)・右ジェイド43(女性向け)
製品仕様
ズールー45 | ||
容量 | 重量 | |
SM/MD | 43L | 1.56kg |
MD/LG | 45L | 1.61kg |
最大積載重量 | 18.1kg |
ジェイド43 | ||
容量 | 重量 | |
XS/SM | 41L | 1.52kg |
SM/MD | 45L | 1.55kg |
最大積載重量 | 18.1kg |
元登山用品専門店販売員が教える、このザックの”ここ”がおすすめ!
メインスペースへのアクセスがU字型に大きく開くため、収納・展開がしやすい!
40リットル台のザックには、あまり採用されない機能ですがメインスペースへのアクセスに、U字型のファスナーを採用することで荷物の収納と展開が非常にしやすく、ザックを横倒しにした状態でも収納・展開を可能にしています。
この機能は、すでに収納した荷物が取りやすい事だけでなく、これから荷物を一から収納したいときにも非常に大きなメリットがあります。
一般的な40リットル台のザックでは、メインスペースへのアクセスは頭側とお尻側の両方に用意され、それぞれ巾着やファスナーを採用し、いわばザックがトンネルのような形になるように開閉ができるようになっています。
しかし、このような設計をされたザックの場合、ザックの真ん中のあたりに取りたい荷物がある際は、非常に取りにくいというデメリットがあります。
対して、こちらの商品は、ザックをトンネルで表した際のちょうど真ん中に大きなU字型のアクセスポイントを用意しています。
この機能があることで、荷物が取りやすいということだけではなく、横倒しにした状態で腰を据えながら見やすく丁寧に収納ができるというメリットがあります。
元登山用品専門店販売員が教える、このザックを選ぶ際の”ここ”に注意!
荷室が湾曲しているため、デッドスペースが生まれやすくなる。
今回ご紹介するこのモデルに限った話ではありませんが、実際の収納スペースは単純な円柱状ではなく、少し円柱が歪んだ形になっています。
詳しく見てみると、ザックと背中が直接触れる接地面はメッシュ状の生地で覆われ、荷室自体は背中から少し離れた位置にあり、ちょうど中心から始まり上部と下部にかけて歪んでいることがわかります。
これは、昨今のザックに顕著に見られる形状です。
メリットとしては、背面と荷室を離し背中が直接触れる部分をメッシュ生地にすることで、通気性を向上させ、汗乾きを良くし、結果汗冷えの防止に繋がることです。
もちろん良い機能ではありますが、その点荷室が歪んでしまうことや、重心が不安定になるというデメリットもあります。
このザックに関して言えば、荷室の歪みが大きく、収納が上手な方でないと思ったよりも荷物が入らないという懸念もあります。
解決方法としては、デッドスペースに頻繁に使用しないものを収納するのがよいでしょう。特に、着替え、ファーストエイドキット、携行食以外の食事、バーナー等は、行動中に頻繁に出し入れをしないため、デッドスペースへ入れても大きな問題はありません。
2.オスプレー:ケストレル48(男性向け)・カイト48(女性向け)
メーカー:オスプレー
モデル名:左、ケストレル48(男性向け)・右カイト48(女性向け)
製品仕様
ケストレル48 | ||
容量 | 重量 | |
S/M | 46L | 2.01kg |
L/XL | 48L | 2.09kg |
最大積載重量 | 記載なし |
カイト48 | ||
容量 | 重量 | |
WXS/S | 46L | 1.84kg |
WM/L | 48L | 1.92kg |
最大積載重量 | 記載なし |
元登山用品専門店販売員が教える、このザックの”ここ”がおすすめ!
荷室の湾曲が少なく容量不足を感じにくい ,トレッキングポールを一時収納できる「ストウオンザゴー」が意外と便利
・荷室の湾曲が少なく容量不足を感じない
前述のグレゴリー、後述のドイターのザックに比べて荷室の湾曲が少く、限りなく円柱に近い形状をしています。
そのため、テント泊装備で使う長物のテントポールや、鍋型の大きめのコッフェルなど、少し体積を取りそうなギアでもデッドスペースを生むことなく、素直に収納することができます。
またカタログ数値も46リットル〜48リットルと、グレゴリーやドイターと比べると40リットル台の中では容量が最も多く、たとえテント泊装備を収納したとしても容量不足を感じることは少ないです。
・トレッキングポールを一時収納できる「ストウオンザゴー」が意外と便利
この機能はオスプレーのザックだけに搭載されたものです。
通常、トレッキングポールを山行に持っていく際、ポールを使用しない時はザック背面に用意された「トレッキングポールホルダー」と呼ばれる部位に装着し、使用する際はザックを一度下ろしてから、トレッキングポールホルダーからポールを外し使用します。
実はこの、「一度ザックを下ろしてポールを外し、使用しない時は、またザックを下ろして、ポールを装着する」という一連の動作がフィールドだとかなり面倒に感じます。
特に、道幅が狭くアップダウンの激しい稜線上でこの動作を行おうと思うとより面倒さが増します。
その面倒さを解決してくれるのが、この「ストウオンザゴー」の機能です。
写真の通り、トレッキングポールを「ザックを背負ったままの状態で」ザック本体に装着することができます。
例えるなら、侍が自身の刀を腰に携行するようなイメージです。
特に足腰に自信がない方でトレッキングポールを使用する方や、山行にはトレッキングポールを必ず携行したい方には注目してもらいたい機能です。
元登山用品専門店販売員が教える、このザックを選ぶ際の”ここ”に注意!
ウェストパッドやチェストハーネス共に、他メーカーと比べると作りが薄くクッション性が低い。
たとえば、前述のグレゴリーは特にチェストハーネスのクッション性が高く、体型に合わせて湾曲形状を描いており、重たい荷物を背負っても背中全体に荷重を分散させることでフィット感が出やすくなっています。
また、後述のドイターに関しては、ウエストパッドが非常に分厚く、テント泊装備等の総重量10kgを超えるような重さでも、腰に重量を集中させることで、重さを感じづらい設計になっています。
対して、この商品は他のメーカーと比べるとウエストパッドもチェストハーネスも作りが薄く、クッション性も低くなっています。
そのため、テント泊装備等の総重量10kgを超えるような重さを背負う場合は、他メーカーと比べるとそのクッション性の低さやパッドの薄さゆえに、実際よりも荷物が重く感じてしまうこともあります。
また場合によっては、チェストハーネスが体に食い込み、痛みを感じてしまうこともあります。
これは、あくまで私がこれまで販売をしてきた中での経験談ではありますが、オスプレーのこの商品に関して「各パッドの薄さ」や「チェストハーネスの食い込みによる痛み」をご指摘されるお客様が多いと感じました。
この問題の解決方法は、荷物を収納する際に体の重心とザックの重心の位置を意識したパッキングを行うことです。
特に重たい物は背中側に近く、そしてできるだけザックの上部へ持ってくることで重心が安定します。
もう少しわかりやすく見てみましょう。
上記のイラスト左側の通り、荷物の重心が背中の近くにあるときは体の重心が安定するため、体に余計な負荷がかからず、実際の荷物の重さよりも体感としては軽く背負うことができます。
対して、イラスト右側の通り、荷物の重心が背中から遠くにあるときは体の重心が不安定になるため、体に大きな負荷がかかります。
特に、このザックのような各パッドが薄くクッション性が低いザックの場合は、重心が適正でないと前述のような「チェストハーネスの食い込みによる痛み」が発生しやすくなります。
このように、体の重心とザックの重心の位置を意識したパッキングをすることで問題が解決できます。
3.ドイター:フューチュラプロ40(男性向け)・フューチュラプロ38SL(女性向け))
メーカー:ドイター
モデル名:左、フューチュラプロ40(男性向け)・フューチュラプロ38SL(女性向け)
製品仕様
フューチュラプロ40 | ||
容量 | 重量 | |
ワンサイズ | 40L | 1.62kg |
最大積載重量 | 記載なし |
フューチュラプロ38SL | ||
容量 | 重量 | |
ワンサイズ | 38L | 1.6kg |
最大積載重量 | 記載なし |
元登山用品専門店販売員が教える、このザックの”ここ”がおすすめ!
背面構造の「エアコンフォートシステム」により、背中の汗蒸れ・汗冷えを抑えることができる
昨今のザックでは一般的となった、背面メッシュの構造ですが、じつはこの構造の前進である「エアコンフォートシステム」こそ、1984年に世界で初めてドイターが開発し、特許を取得した画期的な背面通気システムです。
業界の先駆者という意味合いだけでなく、実際に私もこのフューチュラシリーズを使用しており、その構造から来る汗乾きは他メーカーと比べる必要のないほど良いものでした。
余談ですが、登山ギアにおける「汗乾きの良さ」は特に重要視されている要素の一つです。
理由は、低体温症を防ぐためにあります。
低体温症とは、深部体温(脳や内臓など身体内部の温度)が下がってしまうことをいいます。 深部体温が35度以下になると、激しい震えや、判断力の低下などの症状があらわれ、「低体温症」と診断されます。 体温が下がるにつれ、筋肉の硬直、脈拍や呼吸の減少、血圧の低下などが起こり、死に至ることもあります。
登山においては、主に以下3つの要因によって体温が奪われます。
1.気温の低下(標高によるもの)
2.風
3.水分(汗や天候によるもの)
「1.気温の低下、2.風について」
防寒着を用意することや、防風性のあるレインウェアを用意するなど、対策を講じることができます。
「3.水分について」
外部的な要因(雨・河川等での濡れ)はレインウェアなどの防水性能のあるものを使用することで対策ができます。内部的な要因(汗による冷え)については、昨今では「ドライレイヤー」と呼ばれる、汗処理能力に長けた肌着を着ることで対策を講じることができます。
話は少し逸れましたが、ザック選びをする上でも汗処理能力に長けた物を選ぶことで、低体温症を防ぐことができます。
それに該当するような、背面の通気性、汗冷え防止を重視した考えを売りにしているザックメーカーこそ「ドイター」なのです。
体質的に、汗を掻きやすい方や、汗蒸れ・汗冷えが気になる方は、「エアコンフォートシステム」搭載のフューチュラシリーズをオススメします。
元登山用品専門店販売員が教える、このザックを選ぶ際の”ここ”に注意!
グレゴリーよりも極端に荷室が湾曲しているため、重心のズレ方によっては斜面で転倒・滑落をする恐れが有る。
前述のグレゴリーと同様、荷室が極端に湾曲しており、グレゴリーよりも背中と荷室との距離があります。
そのため、荷物の重心の位置によっては、荷重が体とは反対の斜め下方向へかかってしまうため、急斜面等でバランスを崩した際に転倒をしてしまったり、最悪の場合滑落をしてしまう危険性があります。
解決方法としては、前述のオスプレーのザックの通り、パッキングの際は荷物の重心が背中の近くに来るように配置し、重心が安定した状態で背負うことを意識しましょう。
さいごに、「百聞は一見にしかず」
登山用品店の販売員を辞めて、すでに1年半が経ちました。
この1年半の間、プライベートでも仲良くさせて頂いていた以前からのお客様や、「登山を初めてみたい」と急に言い始めた、友人など”販売員ではない今”でも様々な方々から登山用品に関するご質問を頂くことがあります。
その際に私が心がけていることは、商品の提案をする際はかならず一緒に「現物を見て確かめる」事です。
その理由は、フィールドでトラブルが発生する可能性を極限まで抑えるためです。
トラブルとは、「登山靴内部で靴ずれした」や「ザックのサイズが合わず肩が痛い」などの小さなものから、「斜面で転倒・滑落した」や「登山中に落石が当たって怪我をした」等の大きなものまで様々なものを指します。
私は元販売員として、また実際に山登りをする身としても「小さな違和感が大きなトラブルに繋がる」ことを知っています。
その、「小さな違和感」を実際に確認するためにも「現物を見て確かめる」ことが重要なのです。
今回この記事を見ていただいた方で、「オススメされたこのザックが欲しい!」「私も買いたい!」
と思っていただいた方は、是非、実際に最寄りの登山用品店へ足を運んでいただき、実際に現物を背負って頂いた上でご購入して頂きたいなと願っております。